| 1) |
青葉茂れる 桜井の
里のわたりの 夕まぐれ
木の下陰に 駒とめて
世の行く末を つくづくと
しのぶ鎧の 袖の上に
散るは涙か はた露か
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| 2) |
正成涙を 打ち払い
わが子正行 呼び寄せて
父は兵庫へ おもむかん
かなたの浦にて 討死せん
なんじはここまで 来つれども
とくとく帰れ 故郷へ
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| 3) |
父上いかに のたまうも
見捨てまつりて われ一人
いかで帰らん 帰られん
この正行は 年こそは
いまだ若けれ もろともに
御供仕えん
死出の旅
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| 4) |
なんじをここより 帰さんは
わが私の ためならず
おのれ討死 なさんには
世は
尊氏の ままならん
早く生いたち
大君に
仕えまつれよ 国のため
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| 5) |
この一刀は 去し年
君の賜し ものなるぞ
この世の別れの 形見にと
なんじにこれを 贈りてん
行けよ正行 ふるさとへ
老いたる母の 待ちまさん
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| 6) |
ともに見送り 見返りて
別れを惜む 折りからに
またも降りくる 五月雨の
空にきこゆる 時鳥
誰か哀れと 聞かざらん
あわれ血に泣く その声を
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