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第一章
(
だいいっしょう
)
昔
(
むかし
)
の
箱根
(
はこね
)
1)
箱根の山は 天下の険
函谷関
(
かんこくかん
)
も物ならず
万丈の山
千仞
(
せんじん
)
の谷
前に
聳
(
そび
)
え
後
(
しりえ
)
に
支
(
さそ
)
う
雲は山をめぐり
霧
(
きり
)
は谷をとざす
昼猶
(
ひるなお
)
闇
(
くら
)
き杉の並木
羊腸
(
ようちょう
)
の
小径
(
しょうけい
)
は
苔
(
こけ
)
滑
(
なめら
)
か
一夫関
(
いっぷかん
)
に当るや
万夫
(
ばんぷ
)
も
開
(
ひら
)
くなし
天下に旅する
剛毅
(
ごうき
)
の
武士
(
もののふ
)
大刀腰
(
だいとうこし
)
に
足駄
(
あしだ
)
がけ 八里の岩ね
踏
(
ふみ
)
み
鳴
(
な
)
らす
斯
(
か
)
くこそありしか
往時
(
おうじ
)
の武士
第二章
(
だにしょう
)
今
(
いま
)
の
箱根
(
はこね
)
2)
箱根の山は天下の
阻
(
そ
)
蜀
(
しょく
)
の
桟道
(
さんどう
)
数ならず
万丈
(
ばんじょう
)
の山
千仞
(
せんじん
)
の谷
前に
聳
(
そび
)
え
後
(
しりえ
)
に
支
(
さそ
)
う
雲は山をめぐり
霧
(
きり
)
は谷をとざす
昼猶
(
ひるなお
)
闇
(
くら
)
き杉の並木
羊腸
(
ようちょう
)
の
小径
(
しょうけい
)
は
苔
(
こけ
)
滑
(
なめら
)
か
一夫関
(
いっぷかん
)
に当るや
万夫
(
ばんぷ
)
も
開
(
ひら
)
くなし
山野に
狩
(
かり
)
りする
剛毅
(
ごうき
)
の
壮士
(
ますらお
)
猟銃
(
りょうじゅう
)
肩
(
かた
)
に
草鞋
(
わらじ
)
がけ 八里の岩ね
踏
(
ふ
)
み破る
斯
(
か
)
くこそありけれ
近時
(
きんじ
)
の壮士