いなかの四季(しき)

1)	道(みち)をはさんで　畠一面(はたいちめんに)に 麦(むぎ)は穂(ほ)が出(で)る　菜(な)は花盛(はなざかり)り 眠(ねむ)る喋々(ちようちよう)　とび立(た)つひばり 吹(ふ)くや春風(はるかぜ)　たもとも軽(かる)く あちらこちらに　桑(くわ)つむ少女(おとめ) 日(ひ)まし日ましに　はるごも太(ふと)る
2)	ならぶ菅笠(すげがさ)　涼(すず)しいこえで 歌(うた)いながらに　植(う)え行(ゆ)く早苗(さなえ) ながい夏(なつ)の日　いつしか暮(く)れて 植える手先(てさき)に　月(つき)かげ動(うご)く かえる道々(みちみち)　あと見(み)かえれば 葉末(はずえ)葉末に　夜(よ)つゆが光(ひか)る
3)	二百十日(にひゃくとうか)も　事(こと)なくすんで 村(むら)の祭(まつり)の　太鼓(たいこ)がひびく 稲(いね)は実(み)がいる　日よりはつづく 刈(か)ってひろげて　日に乾(かわ)かして もみに仕上(しあ)げて　俵(たわら)につめて 家内(かない)そろって　笑顔(えがお)に笑顔
4)	そだを折(お)りたく　いろりの側(そば)で 夜(よる)はよもやま　話(はなし)がはずむ 母(はは)がてぎわの　大根(だいこん)なます これがいなかの　年(しき)こしざかな 棚(たな)の餅(もち)ひく　鼠(ねずみ)の音(おと)も 更(ふ)けて軒端(のきは)に　雪降(ゆきふ)り積(つも)る